TEL.03-5393-5133
〒177-0042 東京都練馬区下石神井1-8-27-305
橋本行政書士事務所(交通事故サポートセンター)
こちらでは上肢の主な外傷に関して症状や後遺障害について、説明していきます。
骨盤は、左右の寛骨(かんこつ)と仙骨(せんこつ)、尾骨(びこつ)で構成される盤状の骨で、そのうち寛骨は腸骨(ちょうこつ)、坐骨(ざこつ)、恥骨(ちこつ)の3つの骨の結合体です。
左右の寛骨は前方で恥骨結合で、後方では仙腸関節で連結しています。
骨盤の形状は男女で異なり、男性は幅が広く縦長ですが、女性は幅が広くなっています。
骨盤の付近は血流が多いので、骨折部や骨折周囲血管の損傷により、ショック状態で救急搬送されることが多く、救命処置が最重要です。
骨盤骨折での死亡率は5~10%と言われており、初期治療の遅れが命取りとなります。
骨盤骨折は、大きく骨盤輪骨折と寛骨臼骨折に分類されていて、骨折型が重度であれば、全身状態の安定、回復を待って、整形外科的手術を行います。
症状としては、受傷の状況にもよりますが、腹痛、腰痛を訴えることが多いのですが、血圧低下や頻脈、意識レベルの低下などショック状態のことも多く、本人の訴えが不明な場合もあります。
従って医師は、受傷原因である外傷が大きな外力によるもので、ショック状態である場合には骨盤骨折を疑います。
画像検査としてX線、単純CT撮影が基本ですが、出血源の確認のため、造影CTも有用です。
骨盤は内側でぐるりと輪になって骨盤輪を形成し、安定していますが、骨盤輪骨折となると安定性が失われます。
骨盤の安定性が保たれている場合は保存療法(手術をしない療法)となることもありますが、骨盤の不安定性が生じている場合は手術療法が選択されます。
出血性ショックなどが生じている場合は、全身状態の管理が最優先されます。
後遺障害等級は、骨盤骨の骨折による骨盤骨の変形が残れば12級5号ですが、股関節を構成する寛骨臼の骨折があると股関節の機能障害の症状が残り、可動域の角度により10級11号もしくは12級7号が認定されることがあります。
女性の場合、骨盤に多発骨折を生じると、骨盤の変形により正常分娩が不可能となり、出産時は帝王切開が必要となることが予想されます。
その場合は11級10号(胸腹部臓器に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの)に該当する可能性があります。
また、骨盤骨折は内臓損傷との合併症をおこすことも多いので、「内臓および生殖器の障害」の確認もしておきましょう。
股関節は人体最大の球関節で、荷重伝達の役割から強い安定性が必要とされている関節です。
従って、股関節の脱臼が引き起こされるにはかなりの高エネルギーがかかった外傷ということになります。
交通事故では dash boad injuryと呼ばれる、膝がダッシュボードに打ち付けられる状態で、主に「後方脱臼」がよく発生しています。
股関節周囲の痛みや腫れがあり、自動運動は困難です。股関節脱臼の大部分を占める後方脱臼では大腿骨が後方に外れていますので下肢は短縮して、軽度の屈曲・内転・内旋の傾向がみられます。
単純X線検査で確認ができます。
骨盤側の寛骨臼や、大腿骨側の大腿骨頭の骨折を伴っている場合は、坐骨神経麻痺や大腿骨頭壊死、変形性股関節症などの合併症が発症する場合もあります。
坐骨神経麻痺は骨頭や骨折した後壁の圧迫によるもので、後方脱臼の際に10~20%の頻度で起こると言われています。圧迫が解除されれば数年で約半数は回復します。
変形性股関節症は、整復が不十分な場合や荷重部に骨折があった場合などに、約10~40%の割合で発生します。将来的には人工股関節置換術の適応となることも多く、深刻な合併症となり得ます。
応急処置としては、麻酔下で整復、つまり寛骨臼から外れた大腿骨頭を戻してはめ込みます。
その後は、保存療法(手術をしない療法)と手術療法の選択となります。
上記の徒手整復が可能であり、大きく位置がずれている骨折や関節内骨折がない場合は、保存療法の適応となります。
2~3週間の介達牽引を行った後、荷重をかけない歩行練習を開始して、4~6週目あたりから徐々に部分荷重歩行を開始します。
介達牽引とは、皮膚の上から特殊なバンドなどで牽引をすることです。
それに対して直達牽引という方法がありますが、これは骨に直接鋼線などを入れて行う牽引方法です。
そして以下の場合には手術療法の適応となります。
①徒手整復不可能な脱臼骨折
②臼蓋の後壁骨片があり、徒手整復後容易に再脱臼する場合"
③大腿骨頭骨折を伴う場合
④関節内骨折"
⑤坐骨神経麻痺が合併している場合
大腿骨頭壊死などで人工股関節に置換された場合は、10級11号が認定されます。
その他では、症状の程度により、股関節の機能障害として10級11号や12級7号が認定されます。
大腿骨頚部や転子部とは、大腿骨の上の方(股関節に近い方)あたりのことで、一番上は球形をしているので骨頭と呼ばれます。そのすぐ下の部分は人の首のように細くなっているので頚部と呼ばれ、その下は太くでっぱった形になっており、この部分が転子部と呼ばれます。
この頚部を骨折したのが大腿骨頚部骨折で、転子部を骨折したのが大腿骨転子部骨折です。この二つを広義の意味で「大腿骨頚部骨折」ということもあります。
関節は関節包という袋で覆われており、関節液で満たされています。
通常、骨の表面には外骨膜があり、折れた骨が癒合する際に重要な役割を果たすのですが、関節包の内側は骨の表面に外骨膜がありません。
大腿骨の近位部(股関節に近い部分)でいうと、大腿骨転子部は股関節包の外側にあるのに対して、大腿骨頚部は股関節包の内側にあるので、大腿骨頚部には外骨膜が存在せず、また大腿骨頭への栄養血管が損傷されやすく、大腿骨頚部の骨折は非常に癒合しにくいという特徴があります。
これに対して転子部骨折は外骨膜があり、栄養血管も保たれるため、骨癒合は良好です。
※大腿骨頚部骨折は癒合しにくい。転子部骨折は癒合しやすい。
痛みと腫れがあります。体動も困難で、歩行不能です。 内旋や外旋(下肢をねじる運動)で痛みが増強します。 また、下肢の短縮やねじれを生じることがあります。
単純X線検査で、両股関節正面像と、患側の軸写像を撮ります。
原則として手術治療となります。 大腿骨頚部骨折に対しては「骨接合術」か「人工骨頭置換術」のどちらがが行われ、転子部骨折に対しては「骨接合術」が行われます。
骨接合術というのは骨の折れた部分を金属などの器具で固定する手術です。
人工骨頭置換術というのは,骨をくっつけるのはあきらめて骨折した頚部から骨頭までを切除して、そこを人工物(金属,セラミックス,ポリエチレンなどの素材)で置き換える手術です。
骨接合術を行うと、骨頭壊死や遅発性骨頭陥没という合併症を生じる危険性がありますが、人工骨頭置換術に比べて身体的な手術の負担がやや小さくて済みます。
人工骨頭置換術の場合は合併症の心配はないのですが、身体的な手術の負担や、長期的には人工骨頭の耐久性のために再置換をしなければならないこともあります。
大腿骨頚部骨折に対する手術の選択としては、骨折部が大きくずれている場合には人工骨頭置換術、あまりずれていない場合には骨接合術を選択するのがよいのではないかと考えられています。
大腿骨転子部骨折に対しては、転子部骨折は非常に骨癒合しやすい骨折なので、ずれた骨折部をできるだけ元の形状に近づけて、金属の器具で固定する骨接合術を行うのが一般的です。
ラグスクリューという太いネジを大腿骨の外側部分から骨頭内に入れて、これを大腿骨の外側に当てたプレートや大腿骨の管腔内に差し込んだ髄内釘と呼ぶ太い金属棒で支えて固定する方法です。
手術後は早期の歩行を目標として、安定していれば翌日から全荷重での歩行が可能となることも多くあります。たとえ筋力上歩行が困難な場合でも、手術翌日から車いすを使うなど、離床に努めることが重要です。
しかしながら大腿骨頚部骨折や大腿骨転子部骨折では、受傷前に屋外活動を一人で行うことが可能であった患者が半年から1年後に元通りに近い歩行能力を獲得できるのは、全体の半分程度です。
後遺障害等級は、人工骨頭置換術を行った場合は10級11号となります。
骨接合術を行った場合は、関節可動域の角度により、10級11号または12級7号が見込めます。
大腿骨は、人体で最も大きな長管骨です。この骨の、関節を構成していない中央あたりの割とまっすぐな部分を、骨幹部と言います。
大腿骨の骨幹部骨折は、交通事故や転落などの大きな外力(高エネルギー外傷)で起こることが多く、そのために骨盤や股関節、膝関節などの多発外傷を伴うことも少なくありません。
骨折部の激しい痛み、腫脹、変形などが起こります。この骨折では一般的に多くの出血が起こっているので、血圧低下や出血性ショックなどの全身状態の変化に注意する必要があります。
治療は、保存療法と手術療法の2通りとなります
小児の場合は骨新生が盛んで骨癒合を得られやすいので、保存治療が選択されます。 初期治療で骨折した骨をもとの状態に戻す整復を行い、シーネ、ギプス等によって固定します。長期間の固定が必要となりますので、運動、仕事の制限があります。
膝関節は、大腿骨と下腿(脛骨、腓骨)が主に4つの靭帯でつながっています。
その4つの靭帯とは、
前十字靭帯(ACL)
後十字靭帯(PCL)
内側側副靭帯
外側側副靭帯
です。
このうち前十字靭帯と後十字靭帯は、膝が前後にずれるのを防ぐ役割があり、特に前十字靭帯は膝から下が前にずれるのを防いでいます。
前十字靭帯損傷は、膝に直接大きな外力を受けたときにも起きますが、多くの場合は膝をひねった時に衝撃を受けたりバランスを崩したりした際に発生します。
受傷から間もない頃の主な症状は、膝部の痛みです。そして多くの場合、断裂した前十字靭帯からの出血のために膝が腫れあがり、関節可動域が制限されます。
また、受傷から日数が経過してからは膝がくずれたり、膝の不安定感を感じる状況となります。
膝関節の徒手動揺性検査として、主にラックマン(Lachman)テストを行い、膝のぐらつきの程度や有無などを確認します。
これは、医師(検者)が患者の足に直接触れて行う検査で、膝を15~20°屈曲させた状態で膝から下を前方に引き出します。
前十字靭帯断裂の場合は、膝から下が前方に異常なほど引き出されます。
前方引き出しストレスをかけた状態でX線撮影を行うのが「ストレスX線検査」です。
断裂がある場合は脛骨がずれた状態で撮影されます。
MRI検査も非常に有用とされていて、前十字靭帯損傷に対する正確性は97~98%と言われています。
ただ、MRIでは部分損傷か完全損傷かの区別が困難なので、必要に応じて関節鏡を行って直接損傷を確認することもあります。
関節鏡とは、関節部分に直接差し込んで確認する内視鏡です。
前十字靭帯損傷の程度が軽度だったり、今後激しい運動をするようなことがない場合には、保存療法(手術をしない治療)を行うことがあります。
それ以外では手術療法となりますが、縫合修復手術は困難なので、靭帯の再建術(ACL再建術)となります。
ACL再建術は関節鏡視下で行われ、自分の別の靭帯(多くは内側ハムストリング腱)を使って再建します。
事故から時間がたってからの手術では必ずしも改善されるとは限らないと言われています。
保存療法でも膝関節の動揺性を残すことがあり、その場合、常に硬性補装具を必要とするものには8級が認定されます。
関節に動揺性を残し、時々硬性補装具を必要とする場合は10級、激しい労働に限って硬性補装具が必要な場合は12級です。
膝の靭帯のうち、後十字靭帯は膝から下が、後ろ側にずれることを防いでいる靭帯です。
ですから交通事故の際に膝をダッシュボードに強く打ちつけて、後ろ方向に大きな外力がかかったときに受傷することが多く、スポーツで受傷することが多い前十字靭帯損傷に比べて、後縦靭帯損傷は交通事故や労災事故での割合が50~60%と多くなっています。
受傷直後には膝の痛みを感じます。前十字靭帯損傷と同じく損傷した靭帯から出血するので腫脹がありますが、量は少なめです。
膝から下(脛骨)が異常に後方にずれる、脛骨後方不安定性が生じます。
仰臥位(あおむけ)で膝関節を約90°屈曲して、脛骨を検者(医師)が手で後方に押し込んで確認します。
健側と比較するとわかりやすいのですが、ACL(前十字靭帯)損傷での動揺性と混同しやすいので注意が必要です。
膝前後不安定性を認めた場合に、ACL(前十字靭帯)損傷との鑑別に有用なテストです。
仰臥位(あおむけ)で膝関節を約90°屈曲して、脛骨を検者(医師)が足関節を固定し、被験者(患者)に膝の伸展をさせた際に脛骨粗面の前方移動があれば後十字靭帯損傷、認めなかった場合は前十字靭帯損傷と判断します。
MRIによる後十字靭帯損傷の診断率は100%と言われており、非常に有用です。
後方押し出しストレスをかけた状態でX線撮影を行うのが「ストレスX線検査」です。
断裂がある場合は脛骨がずれた状態で撮影されます。
上で説明した前十字靭帯損傷(ACL損傷)が手術対応になることが多いのに対して、後十字靭帯損傷(PCL損傷)は、保存療法が第一選択とされます。
保存療法は、主に大腿四頭筋訓練、装具療法です。
ストレスX線検査で10㎜以上の動揺性が認められる場合は手術の対象となり、関節鏡視下で靭帯再建術を行います。
事故から時間がたってからの手術では必ずしも改善されるとは限らないと言われています。
保存療法でも膝関節の動揺性を残すことがあり、その場合、常に硬性補装具を必要とするものには8級が認定されます。
関節に動揺性を残し、時々硬性補装具を必要とする場合は10級、激しい労働に限って硬性補装具が必要な場合は12級です。
膝を構成する靭帯の損傷のうち、一番多いのが内側側副靭帯損傷(ないそくそくふくじんたいそんしょう:MCL損傷)です。
受傷原因は、交通事故の他、スポーツの最中や日常での転倒など、多岐にわたります。
MCL損傷はその損傷程度により、以下の1度から3度に分類されます。
1度 | 損傷部の圧痛のみで外反不安定性はない |
2度 | 膝関節系度屈曲位で外反不安定性を認める |
3度 | 軽度屈曲位だけでなく伸展位でも外反不安定性を認める |
最も重い3度損傷は、十字靭帯損傷を合併している場合がきわめて多くなっています。
受傷直後の症状は、膝の内側の痛みです。また、断裂したMCLから出血するので、内側部分が腫れあがります。
外反ストレステスト(外反動揺性テスト)で確認します。
これは検者(医師)が被検者(患者)の膝を外側から(被検者の右下肢なら、検者の左手で膝の外側を)抑えて、同時に下腿の足首近くのあたりを内側から外側に向かって検者の右手で力を加えます。
その結果、健側と比べて側方動揺性(関節のぐらつき)があれば、内側側副靭帯損傷(MCL損傷)であることが確認できます。
X線検査は必須です。MCLの骨付着部の裂離骨折や他の骨病変を確認します。
MRIは膝痛がひどくて関節動揺性検査を行うことができない場合や、他の靭帯損傷との合併症の確認などに非常に有用です。
単独の内側側副靭帯損傷であれば、保存療法が原則となります。
受傷直後から数日間の安静後、膝関節運動や筋力増強運動を行って膝機能の回復に努めます。
不安定性のある2度や3度損傷に対しては、MCL損傷用の装具を使うことが有用です。
こうして保存療法を行った場合、日常生活が支障なく送れるようになるまでは3週間程度です。
ACL損傷(前十字靭帯損傷)を合併している場合は、手術療法を検討します。
この場合でも、ACL損傷に対しては手術をしますが、MCL損傷については保存療法を行う、という考え方が多くなってきているとのことです。
後遺障害は、動揺関節による機能障害と、神経症状が考えられます。
ストレスX線検査で健側と比較して不安定性が立証されれば、10級もしくは12級が認定されます。
その他には、損傷部分の神経症状(痛み)で12級13号または14級9号が認定されることがあります。
膝関節は、大腿骨と脛骨がいくつかの靭帯でつながれている状態ですが、半月板はその大腿骨と脛骨が接する部分のクッションの役割をするものです。
三日月状の繊維性軟骨で、一下肢に内側と外側の二つが存在します。
半月板はクッションの他に潤滑作用などの役割もあるのですが、これが損傷すると、膝関節の機能に著しく影響を与えることになります。
主な症状は「ひねったときの痛み」です。安静時の痛みはないことが多く、その他には引っかかり感、ロッキング(可動域制限)、不安感などがあります。
引っかかり感は、膝をある角度にしてひねると「引っかかる」「外れる」といった感覚になります。
ロッキングは、大きな断裂があった場合などで、膝関節がある角度から伸ばせなくなってしまう状態です。
半月板は基本的に血行が乏しい組織なので、自然治癒能力はとても低いため、保存療法の場合は「痛みを軽くする治療」となります。薬物治療や理学療法です。
ロッキングを生じている場合や程度がひどい場合は手術療法となります。
手術は関節鏡視下での「切除術」か「縫合術」となります。多くの場合は切除術です。
関節鏡は、関節部分に直接差し込む内視鏡で、手術による身体的な負担が少ないため、日帰り手術も可能です。
後遺障害等級は、半月板損傷単体で関節の機能障害が残ることはほとんどありません。
半月板損傷とその修復が画像で確認できれば、12級13号が認定される可能性があります。
関連項目 |